奴は絶対に俺には勝てない・・・!
最後に笑うのはこの俺っ・・・!
そうっ・・・切り札を持ってるこの俺なんだよ・・・!
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『沼』のハンドルを握る手がぬるぬると滑った。滲む汗が脂を多く含んでいるせいだった。目の前では己の命運を握る銀の玉が役物にぶち当たりながら乱舞している、その挙動をカイジはまじろぎもせず凝視していた。後方では見物客が大当たりを期待し無責任な声援を送る。坂崎のおっちゃんは身の丈を越えたギャンブルにただ狼狽し滂沱の涙を流していた。
「店長、このままでは・・・」
従業員の一人が真っ青な顔を晒し一条に縋るような視線を送る。このままでは本当に7億分の玉が出てしまうと思った。絶対に勝たせてはならない相手を勝たせたとなれば帝愛から“処刑”の裁きが下されることは間違いない。どんな手酷い扱いを受けるかは容易に想像がついた。
悲壮感漂う嘆きに、眼を三角に吊り上げ歯軋りの止まない一条は分かっている!とただ短く一喝した、それは、自身に対する喝である様に村上には感じられた。
「店長・・・もう、こうなったら、形振り構っていられません。アレを使いましょう・・・!」
「・・・そうだな。俺も今同じことを考えていた」
一条の目配せに、村上は弾かれる様にバックヤードへと走った。すぐにフロアへ戻ってきた村上から小さなリモコンを受け取った一条は、震える手でそれを見た。まさかこれを使う機会が自分にも訪れるとは。反吐つきたい思いで苦々しく握り締めた。
そうこうしている間にも、『沼』の玉はクルーンに溢れ当たりの穴に沈もうとしている、一条は血の滲むような思いでタイミングを見計らった。この策が最も効果を上げるその刻を見極める為に。
「おい、くるぞ!もう入るしかねぇ!」
「いけいけ!入っちまえ!」
徐々に観衆の声は高まりその瞬間はいやおうにも近づいていた、坂崎がカイジに縋り付きわなわなと唇を震わせる。掠れ声でカイジくん、カイジくんと繰り返し、それは夢遊病者を思わせた。従業員は全員拳を硬く握り眼は見開かれ血走っている。場の緊張と期待と不安は最高潮に高まってきている。
店長、今です!村上が目だけで一条に合図を送る。受けた一条はただコクリと頷き、手元のスイッチを思い切り押した。
「は・・・・・・ぁぁ、 あ あああああああ!?」
カイジの喉から突如として奇声が上がった。その異様さに全員が何事かと戸惑い凍りつく。
「ど、どうしたんだカイジくん!?おい、おい・・・!」
坂崎が慌てて声をかけるも、カイジはハンドルから手を離し椅子にだらしなく身体を投げ出した。苦悶に歪む目は半分閉じられ、口元には白くなった唾液が光っている。そうして、おこりを起こしたように全身を痙攣させる。あまりの様子の変わりように、従業員ですら度肝を抜かれた。
「て、店長、今・・・何をされたんですか!?」
事態の急変は何か一条が仕掛けたからだ、とは思ったが何が起きたかまでは理解できない。一条は唇を噛み締めて黙っていた。村上が遠慮して一層声を低くする。
「・・・お前ら、地下の人間がシャバに出る時、何付けられるか知ってるか」
「えっ・・・発信器を、付けられるとは、漏れ聞いてますが・・・」
「そうだ。通常は手首に付けられる、見ろ、カイジの手首にも嵌められている。ただな・・・伊藤カイジの場合、特例で・・・その、地下で拷問をな。受けてた関係で・・・その、アソコにもな、似たようなのが付いてるんだ」
「は・・・?」
「だから、・・・つまり!今の伊藤カイジは、ちんぽにローターあてられて悶絶してるってことだよ・・・!」
それを聞いた全員が顔を引き攣らせ静まり返った。しかしそんなことなど知らぬ沼パチンコ台の周囲のどよめきは収まっていない。
「おい、どうした・・・?」
「なにしてんだよ!もうちょっとなんだぞ!?」
「カイジくん、おい、どうした、しっかりしろ、カイジくん!」
坂崎がカイジの腕を掴むがカイジはだらしなく口を開けて妙な奇声を上げるばかりだった。そのうちに坂崎は気付いた。
これは・・・
この様子は・・・
「か、カイジくん、アンタ、まさか・・・」
この時、肩をゆすったのがいけなかった。この刺激が引き金になってしまったのだろう、カイジは一際大きな嬌声を上げそして跳ねる様に身体を震わせ、一気に鎮まった。
「・・・・・・・・・・・・・」
誰もが嗅ぎ覚えのある青臭さが場に漂い始めた時、『沼』の排出穴の詰まりが解消された。
終われ!
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[2011.3.15]
■アアニ先生からのリク : 発信器(兼ローター)が性器に仕込まれてるカイジがいよいよ沼大当たりという場面になってザーメン漏らしちゃう話、略してビビビdeウウウ!日本語でおk!
素敵イラストはつるぎさんにお願いしました。お願いしたっていうか、巻き込んだっていうか^^
あとこのムチャ振りテーマを二時間で書き上げた私を誰か褒めて下さい。
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