あぁ面倒くせぇ面倒くせぇ。

息をするのもめんどくせぇ。

この状況、本当に俺のアタマはマリモになっちまったんじゃねぇかと疑うくれぇに何かがオカシイ。

さっきから俺に跨って金髪のコックがアホ面晒してぎゃんぎゃんと喘いでいる。
巧いのはメシを作ることだけかと思っていたら夜の方が上等だもんで、俺は初めてコイツとヤった時、図らずも失笑した。

コイツ感度が良すぎるんだか相性がイイのか知らんがさっきから何度も何度も腹の上にぶちまけていた。
オメデタイ奴だ、陰嚢の栓がブチ取れているとしか思えねぇ。

俺はというとちっともイケなかった。草むらみてーなヘアーの真ん中でムスコは立派に育って直立してるし、然るべき器官に収まっちゃいるのだが本当に「収まってる」だけで、アレだ、台所の排水溝に被せるゴムのビラビラ、あれより厚みと閉塞感のある落とし穴にスッポリ嵌まったという感じ。
そこで意味も無く上下してるって感じか。

出し入れしてるだけだ。

キモチィぃぃぃeeeEEeeeyeah〜〜〜!!とか何にもねーから汚物を見る時と同じ感覚でコックを見つめてみたが萎えそうになってすぐヤメた。

コイツは男だ。

何をどう逆さにしてみても男だ。

俺は男が跨ることを許した罰を甘んじて受けているんだろうか。



だが俺だって遅漏だの不感症だのっていうわけじゃねぇ、この間だって俺は敵を切り伏せている時何回出したか分からねぇんだ。

よく切れる刀はイイもんだ。
刀を振り抜くとパッと白っぽい肉が覗いて、一瞬間を置いたと思ったら次に狂ったような赤黒い血が噴出すると俺はいつも勃起した。あの裂け目の肉質は女のアソコだって体現することは出来ない、血潮の音は女の潮吹きと変わらないが、これだけの興奮を呼び覚ますものが他にあるだろうか。どんなクズでも血の色は同じだ。同じように俺を酷く愉しませる。

俺は切り伏せる毎に腹巻の下がはちきれそうになって何度も何度もだらしなく射精した。
生きている奴が視界から消える頃には汗じゃなくてザーメンの青臭さで一杯になったくらいだ、お陰でナミに訝られた。

大体、例えばこのセックスが(これがセックスと言えるならば)カラダが溶けるくらいヨかったとして、何百回射精しようが男の尻じゃなんにもならねぇ。孕むこともない腹にぶちまけることに何の意味があるだろうか。

俺の一物はクソまみれになって、コイツは腹を下すのが関の山だ。

コイツの中身はがらんどうだ。
この空間はクソを出すのと俺のを突っ込むの以外に、何か役に立ってンのか?

もしコイツがこの“中”にガキを孕んだとしたら、腹を掻っ捌いて見てみてぇ。
そしたらコイツは人としてちゃんと機能してるってこったし、俺は不能じゃないってことが証明される。
証だ、それは消えない傷にも印にもなる。

だがそれはいくら妄想しようが到底ありえないハナシで、そういう意味じゃ俺のペニスは意義ある射精の出来ない役立たずだ。

去勢されているのかもしれない、この船上という空間が多分に俺を去勢した。


名誉の為に言わせてもらえれば、俺は別に女とヤれないってわけじゃない。

あぁ、女で思い出した。
一番最近のハナシだ。

陸に下りて商売女を買った時、顔とカラダはソコソコなんだがあんまり態度がベタっとしてて無性に腹の立つ奴だったから、女が持ってた、阿片の塊が入ったゴム袋をぶん盗って、無理矢理アソコに突っ込んでやったことがあった。

コワイだのヤメテだの何だの、ぎゃーぎゃー煩ぇから面倒になって鬼徹をアソコに思いっきりブッ刺してやった。イテエと言って気が狂わんばかりに髪を掻き毟ったかと思ったら、ゴム袋が破けて阿片が粘膜にダイレクトに効いたらしく途端にヨガって煩く喘ぎ出した。世界で一番キモチイイって顔と痛くて死んじまうって顔したまま本当にまさしく逝っちまった。

女がヨガリ狂って死んでいった時、俺は堪らなくなって何度も血と涎で汚れきって歪んだ顔に何度も何度もぶっかけてやった。
アソコは鬼徹で広がっちまってちっとも締まらなかったから、専らオナニーに専念したような気がする。

散々蹂躙して、だが俺は、翌日にはコイツの顔すら忘れちまった。
このスピード感、白痴の俺に相応しい。


あぁ、それならやっぱ俺、女とヤれてねーじゃねーか。
やっぱ俺は役立たずのインポ野郎か。

そう言えばあの女、

「どうしてアタシなの!?」

とかなんとか呟いてたな。
サンジも似たようなことを口走ったことがあったな。





“何故、俺なんだ?”





・・・何故お前かだって?

ははは、自惚れんなよ、別にお前である必要だなんて無いんだよ。

溜まるから出したい、出したいから入れたい。それの何が問題になるってんだ。

そうだ、俺は別にお前を愛してるわけじゃない!

姦りたいから姦るんだ!

簡単なことだ、それしかないだろう!










・・・あ?

何言ってんだ、サンジ。

よく聞こえねぇよ、もっとデケェ声で言えよ。

・・・ん?

つぅか、サンジ、お前、何でそんなに存在が希薄なんだ?

あー・・・ホラ、躯触ろうとしても透けてすり抜けちまう。

あ?オカシクねぇ?

ははは、お前オカシイよ。

ぜっっってーオカシイって。

だって、何だ、そりゃ。アソコからホースみてぇにザーメン垂れ流しじゃねぇか。

違うな・・・ザーメンじゃねぇ、あんだ?蛇?雲?とうとうイカれてチンポコに煙草ブッ刺しちまったか?そりゃ煙か?

あーーー・・・・・・・・・すげー移動してるぞ、そのワケの分かんねぇ物体。

ナニ?俺のこと食いてぇのか?お前ら。

あっ・・・肉食いちぎられちまった、ははは、すげー血が出てんよ。

でもぜんっっっぜん痛くねぇー。

んーーーnnnnnんんんーーーー?なぁ、サンジ、これオカシクねぇ?

え?

あぁ。

オカシイのは、俺、か?

簡単じゃねぇか。

俺、オカシイわ。

だって、さ。



世界が、ピンク色、の、線で、断裂されてんだ、もんなぁ。






















「ゾロっ!おい、しっかりしろよ、ゾロ!」

サンジが切羽詰った声で俺の躯を揺すってくるから、鉛を打ち込まれたみたいに重い頭をどうにか覚醒させて眼を開こうとした。ところが目はヤニでガチガチに固まっちまって、瞼を持ち上げるだけだってのに緑色の睫毛を何本か犠牲にしてやっとさこじ開けた。

「大丈夫か?ゾロ。まったく言わんこっちゃねぇ、だからほどほどにしとけって言ったんだ。」

聞けば、俺は夜の楽しみを増進させる目的で出されたクサ入りのケーキを少々ドカ食いし過ぎたらしい。肺摂取より胃の粘膜で吸収するのは思ってた以上に強烈で、完全にバッドトリップ状態だった。

一度も射精しない俺を訝しんだサンジが、俺の顔を覗き込んだら完全に意識がブッ飛んでて、焦ったんだぜと、さっきまで散々楽しんだはずのコックは不機嫌そうにむくれていた。

「セックスドラッグに大麻はまぁまぁの相性だけど、慣れてない奴はバッドになりやすいって聞いてたがなぁ。ホントなんだな〜まぁちっと作る時、クサ入れすぎちまったかもな。」

カカカ、とサンジらしくもなく快活に笑うと、だりぃと呟いて出し過ぎで腫れ上がったチンコを労わる様に布団に突っ伏した。

「まぁ気にすんな、誰にでもあることだ。」

フォローのつもりか何か知らないが、そう言うとヤツは堕ちる様に眠りに入った。

ふと視線を下に移すと、息子は縮み上がって、キンタマはクルミみてーにカチカチに固まっていた。こりゃダメだ、しばらく使いモノにならねぇ。





気にすんなだと?

大麻如きで出せなくなる奴が、人斬りの真似事なんかやってんじゃねぇってんだ。




end.

[2004.10.7 up]






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